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星の歌4

「ナナネソウ?」
「そうだ。茹でても炒めてもそのままでも美味いんだ。日や時期によって味も変わる。
おそらく日照り続きだったから今時分はスカスカで味気ないんだろうよ。お前さんも残念な時に来たな。」
「そうなんですか。食べてみたかったです。」
少しドキドキしながら私は深呼吸をした。
湯気が息と混じってゆらゆらと蒸発しているのをぼんやりと眺めていた。
私は今、ばあちゃん猫と話しているのだ。

「お前さん、今晩もここに泊まるのかい?」
「はい。しばらくはここにいるつもりです。」
「それなら、今晩わしの家へ来い。夜6時頃迎えにくるから。美味いもん食わしてやる。」
「え?ありがとうございます!…いいんですか?」
「お前さん、名前はなんて言うんだい?」
「カナです。天野奏。」
「いい名だね。奏。わしはフミじゃ。これでもう、知り合いじゃな。」
フミという猫はホッホと笑いながら森の方に向き直った。
私もなんだか可笑しくなってきて、クスクスと笑いながら森を見た。
深いみどりが徐々に明るく照らし出されて、光をたくさん浴びようと背伸びしているみたいだ。
「では、6時にまた。」
そう言うとフミは体中からホカホカと湯気をたてて出て行った。
「はい。また6時に。」
フミのちょっと丸い、明るいグレーの毛で覆われた背を見送って、、、しまった。星の歌についても聞いてみればよかった。
でも、また夜に会うし、その時でいいか。
私はお湯の中で足をもみほぐしながらまたサウンドオブミュージックを鼻歌で歌い、今度こそ貸切になった風呂を満喫した。
七音草。どんな味なんだろう。
想像していたらおなかが鳴りだした。
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.04 2013
ちいさなおはなしたち comment(0) trackback(0)

星の歌3

宿へ戻ると、入口で宿のおじさんが新聞を脇に挟んだまま竹箒でほんの気持ち程度掃除していた。
おはようございます、と、軽く挨拶していそいそと風呂へ向かった。
私はまだ誰も入っていないだろうと思われる朝の一番風呂を想像してにやけていた。
そもそも、この宿に泊まっているのは私以外数える程度のようだし、まず間違いなく貸切状態だろう。
きっと最高に気持ちいい!!
勢いよくのれんをくぐり、足元を見て、がっかり。草履が一人分きれいに揃えて置いてあった。
貸切無しかぁー。残念!!
こんな朝っぱらから入ってる人いるんだなー。早起きのばあちゃんかなぁー。
ともあれ私は籠へ浴衣を投げ入れ、浴場へ向かった。
ぴたぴたと裸足にお湯で温まった石が気持ちいい。
さて、一番乗りのばあちゃんはどんな人かな?

どうやらばあちゃんは露天風呂にいるらしい。
普段一人で風呂に入るのが好きな私は、ばあちゃんと2人で露天風呂ってのはあまり気が進まないが、好奇心には勝てなかった。
白くもやもやと沸き立つ湯気でばあちゃんはよく見えない。
あんまりじろじろ見るのも悪いかと思い、さっとお湯につかると、まずは景色を眺めた。
朝の森は静かで深い緑と赤茶がまだらに広がっている。
よく目を凝らすとリスが木の実をかじっているのが見える。
食べられるのかわからないようなキノコもあちこちに生えていて、名前も知らない花々はまだ起きていないようだ。
ひとしきり景色を見て深呼吸し、腕をもみほぐしながらちらっとばあちゃんを見る。

なんと、猫だった。

昨夜の猫かと思い、息をのんで見つめてみたが、違う。
昨夜の猫はもっと若い感じだった。

「いい湯だねぇ。今朝は格段に気持ちがいい。」
ばあちゃん猫が不意に話しだした。
「おたく、何処から来たんだい?」
「東京の…田舎です。」
私は猫の髭の先について光る水滴を見つめながら小さくこたえた。
「ゆっくりしてきな。ここのモノは美味いし、空気もいい。ちと日照りが続いたがね。」
「ありがとうございます。昨夜、どなたか分かりませんが、日照りが続いて味気ないと話しているのを聞きました。何が味気ないんですかね?」
ばあちゃん猫はくるりとこちらを向いて、私の目をしっかり覗き込んできた。
「そりゃあたぶん、七音草だね。ここいらでよく採れる野菜だ。」
.05 2012
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星の歌2

しばらく暗闇に目を凝らしたが、あたりは何事もなかったように虫の音と川の音が聞こえるだけだった。
先程飲んだビールのせいか、私は急に眠くなってしまった。
パリッとのりが効いたシーツの上に大の字になって寝転び、目を閉じた。
ひんやり気持ちがいい。
まどろむ意識の端で耳をすましてはみたが、星の歌は聞こえなかった。

いつの間にか夜が明け、しらみだした空の下。東の山々には美しい白い靄が薄い絹のようにふんわり被さっている。青々と澄んだ空気は森の薫りに満ちていた。
遠くに見える緑の湖面が、朝日を反射してキラキラと静かなサインを送っている。

浴衣の崩れをなおして外に出る。
深呼吸すると身体中の細胞が喜んでいるみたいだ。

朝だ。
私はなんとなくブラブラと歩いた。
映画やドラマみたいな森の朝だ。静かで、鳥がさえずり、若草色が美しい。
砂利道を少し登ると、開けた草原に出た。
スキー場くらいある草原は、生え揃った芝がずっと上まで続いている。
200メートル先くらいに小屋が見える。
吸い寄せられるように小屋へ向かって歩いていくと、足元に急にぽっかりと茶色い穴が現れた。
直径二メートルくらいの穴は、深さもちょうど二メートルくらいあり、小屋に気をとられてボーッとしていた私は危うくすっぽり落ちてしまうところだった。

はて?何の穴だろう?
考えようにも全く何の穴なのか想像もつかなかったので、私はその茶色い大口を無視して小屋へ向かった。
小屋はわりと小綺麗で、ちょこちょこ人が使っている気配がした。
簡単な調理器具や、掃除用具等、生活に必要な最低限が置いてあった。

でも、何か違う。
何か。
んー、、、わからないから、まぁ、いいか。

私はとりあえず小屋へたどり着くという目標を達成したので、引き返す事にした。
熱い朝風呂に入って仕事という名の休暇を楽しもう。
サウンドオブミュージックの鼻歌を歌いながら宿へ戻る足取りは軽い。
.25 2012
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星の歌 1

それは夏のことだった。深く静まり返った群青の空気の中、少し冷ややかで湿った空気の粒たちが青白い光に照らされてふわふわと遊んでいる。川のちょぼちょぼと控えめに流れる音を聴きながら、さっきから同じ事ばかり頭に浮かんでくる。
どうしたことだろう。
ここの所めっきり星の歌が聴こえないのだ。
それはぶ厚い雲に空が覆われているなんて単純なことではない。私にはいつだって星の歌が聴こえてきていたのだ。かすかに震えるような、川底で石英のカケラがキラキラと反射するような歌が。
夜光虫が飛び回り、ヒグラシが鳴きやんだ夜。私は息をひそめて、星の歌を待っていた。
すると聞きなれない音が聞こえだした。どうやら足音のようだ。人にしては軽やかすぎる。大きさは…そうだな、ネズミよりは大きく、クマよりは小さい。よくよく耳を澄ますと、どうやら会話をしているらしい。
「この夏のできはどうだね?」
「いやいや、日照り続きで甘くも辛くもないんだよ。」
「味気ないってことかい?」
「そう、味気ないってことさ。」
何の話かはわからないが、味気ないことだけはわかった。
そして声はどんどん近づいてきて、月明かりの下に影を落とした。よーく目を凝らして見ると、それは2匹のネコだった。ネコたちはどうやら畑帰りらしく、泥だらけで、大きな袋を担いでいた。おそらくその味気ない何かを収穫した帰りなのだろう。
ネコたちは不意に空を見上げて目を閉じた。しばらくの間、そうしたまま固まっている。私はその光景がなかなか滑稽だったので、興味深く長い間じっと観察していた。
「…聴こえるか?」
「いや、虫の羽音と川の音しか聞こえないな。」
「やっぱりお前にも聞こえないか。」
「いったい何が起こってるんだろうな?」
「いつになったらまた聴こえるんだろうか。」
そうか!このネコたちにも星の歌が聴こえていたんだ。私と同じように、星の歌が聴こえなくなっていることに気付いているんだ。そう思うとたまらなく嬉しかった。
声をかけようかと思っていたら、急に月が雲に隠れ、たちまち辺りは真っ暗になってしまい、2匹のネコを見失ってしまった。



.01 2011
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ちいさなおはなしたち

というカテゴリーを作りました。
私の日常からぽろりと生まれでたちいさなポエムやお話を書き留めておこうと思いまして。
こう見えても結構お話とか作るの好きだったりするんです。
小さい頃から紙とペンがあれば暇つぶしできる子だったので。

そんな訳で、8月頭に生まれた子をひとつ。
続きをいつ書くかは、誰も知りません。
.01 2011
ちいさなおはなしたち comment(0) trackback(0)
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はらだかおる 1985年山口県生まれ仙台育ち東京在住。 現在ムトウアキヒトとuwabami(うわばみ)というアートユニットで精力的に活動中!また、uyulala(うゆらら)というガールズバンドでギターボーカルもじんわりやっています。 宮城県第一高校卒、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒、仙台美術予備校非常勤講師。

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