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星の歌3

宿へ戻ると、入口で宿のおじさんが新聞を脇に挟んだまま竹箒でほんの気持ち程度掃除していた。
おはようございます、と、軽く挨拶していそいそと風呂へ向かった。
私はまだ誰も入っていないだろうと思われる朝の一番風呂を想像してにやけていた。
そもそも、この宿に泊まっているのは私以外数える程度のようだし、まず間違いなく貸切状態だろう。
きっと最高に気持ちいい!!
勢いよくのれんをくぐり、足元を見て、がっかり。草履が一人分きれいに揃えて置いてあった。
貸切無しかぁー。残念!!
こんな朝っぱらから入ってる人いるんだなー。早起きのばあちゃんかなぁー。
ともあれ私は籠へ浴衣を投げ入れ、浴場へ向かった。
ぴたぴたと裸足にお湯で温まった石が気持ちいい。
さて、一番乗りのばあちゃんはどんな人かな?

どうやらばあちゃんは露天風呂にいるらしい。
普段一人で風呂に入るのが好きな私は、ばあちゃんと2人で露天風呂ってのはあまり気が進まないが、好奇心には勝てなかった。
白くもやもやと沸き立つ湯気でばあちゃんはよく見えない。
あんまりじろじろ見るのも悪いかと思い、さっとお湯につかると、まずは景色を眺めた。
朝の森は静かで深い緑と赤茶がまだらに広がっている。
よく目を凝らすとリスが木の実をかじっているのが見える。
食べられるのかわからないようなキノコもあちこちに生えていて、名前も知らない花々はまだ起きていないようだ。
ひとしきり景色を見て深呼吸し、腕をもみほぐしながらちらっとばあちゃんを見る。

なんと、猫だった。

昨夜の猫かと思い、息をのんで見つめてみたが、違う。
昨夜の猫はもっと若い感じだった。

「いい湯だねぇ。今朝は格段に気持ちがいい。」
ばあちゃん猫が不意に話しだした。
「おたく、何処から来たんだい?」
「東京の…田舎です。」
私は猫の髭の先について光る水滴を見つめながら小さくこたえた。
「ゆっくりしてきな。ここのモノは美味いし、空気もいい。ちと日照りが続いたがね。」
「ありがとうございます。昨夜、どなたか分かりませんが、日照りが続いて味気ないと話しているのを聞きました。何が味気ないんですかね?」
ばあちゃん猫はくるりとこちらを向いて、私の目をしっかり覗き込んできた。
「そりゃあたぶん、七音草だね。ここいらでよく採れる野菜だ。」
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.05 2012
ちいさなおはなしたち comment(0) trackback(0)

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はらだかおる 1985年山口県生まれ仙台育ち東京在住。 現在ムトウアキヒトとuwabami(うわばみ)というアートユニットで精力的に活動中!また、uyulala(うゆらら)というガールズバンドでギターボーカルもじんわりやっています。 宮城県第一高校卒、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒、仙台美術予備校非常勤講師。

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